概要 -Overview-

① 資格の趣旨

 日本には、さまざまな分野で活躍する外国人労働者のための在留資格あります。その中でも 技能ビザ は、高度な技能を持つ外国人が働くためのビザです。一般的に用いられる「技能ビザ」という用語で説明します。

 技能ビザは、料理人や大工、宝石職人、ソムリエなどとして従事することができます。日本の産業や文化に貢献する重要な役割を担っています。専門的な実務経験や、国際的に認められた資格などが求められるという特徴があります。ソムリエであれば、実務経験と国際資格の取得が条件になります。許可される職種は厳密に定められており、以下のような職業が対象となります。

  1. 料理人(外国料理の調理):フランス料理、インド料理、タイ料理など、本国で培った専門技術を活かし、日本の飲食業界で活躍できます。
  2. 建築・木工職人:海外の伝統技法を用いた建築技術や木工技術を持つ職人が、日本でその技術を発揮できます。
  3. 宝石・貴金属・毛皮加工職人:高い技術力を必要とする加工職人が対象となります。
  4. 動物調教師:特定の動物を専門的に調教するスキルを持つ方が該当します。
  5. ワインソムリエ:ワインの専門知識と経験を活かし、飲食店やホテルなどで働くことができます。
  6. 航空機操縦士:航空機の操縦の業務に従事することができます。

 技能ビザの取得により、外国人技能者は安定した雇用を得ることができます。専門職の需要が高まる中、優れた技能を持つ外国人が活躍できる機会が広がっています。このビザの申請には、雇用主が適切な条件を満たしていることも重要です。職務内容が明確であることや、適正な給与が支払われることが求められます。

 技能ビザ申請は、実務経験の要件が厳しく、証明書類も重要になります。書類の準備や申請手続きのサポートを行政書士に依頼するのもひとつの方法です。料金の相場は、認定証明書交付申請・変更許可申請で6万円〜20万円となっています。

②資格要件

【基本要件】

「技能」ビザを取得するためには、以下の基本要件を満たす必要があります。

  1. 高度な専門技能を有していること
    特定の職種において熟練した技能や技術を必要とする業務であること。
    5年以上または10年以上の実務経験 が求められる。
  2. 日本の産業や経済に貢献できる職種であること
    対象となる職種は法律で限定されている。
    「外国料理の調理師」なら、母国の料理に関する技能を活かせる必要がある。
  3. 適正な雇用契約を結んでいること
    国内企業または事業主と 正式な雇用契約 を締結していること。
    雇用条件が適正(労働基準法に準拠)であること。
    労働時間、給与、社会保険加入の有無などが審査される。
  4. 技能の証明ができること
    これまでの職務経験や技能を証明するための 証明書や推薦状、資格証 などの書類が必要。
    過去の雇用主や専門機関からの証明が求められる場合もある。

【職種ごとの詳細要件】

「技能」ビザは以下のような業種でのみ認められています。

  1. 外国料理の調理師(例:フランス料理・インド料理・中国料理など)
    母国の料理の専門家であること
    10年以上の実務経験(調理学校の在学期間を含めてもよい)
    日本国内での 単純な調理補助や皿洗い業務では不可
    レストランの経営者や管理職としての要件は「経営・管理」ビザが適用される
  2. 建築・木工技術者(例:寺社仏閣の修復職人)
    日本独自の建築技術や木工技術を持つ外国人が対象
    10年以上の実務経験
    日本の伝統的な建築技術に関する専門性が求められる
  3. 宝石・貴金属・毛皮の加工職人
    5年以上の実務経験(職種による)
    高度な加工技術を持っていることを証明できること
  4. 動物調教師
    5年以上の実務経験
    馬術やドッグトレーナーなど専門的な技術が求められる
  5. ソムリエ(ワイン専門家)
    5年以上の実務経験
    国際的に認められたソムリエ資格を持っていることが推奨される
  6. 航空機のパイロット
    250時間以上の飛行経験
    航空関連の資格を有すること
  7. スポーツ指導者(プロコーチなど)
    3年以上の実務経験(プロスポーツ経験者は免除の場合あり)
    指導実績や専門的なトレーニングスキルを持っていること

必要書類・審査期間

③必要書類(在留資格認定証明書交付申請の例)

【所属機関カテゴリーとは】

所属する企業/団体の規模により提出書類が異なります。カテゴリーの区分は以下のとおりです。

●カテゴリー1

  • 日本の証券取引所に上場している企業
  • 保険業を営む相互会社
  • 日本又は外国の国・地方公共団体
  • 独立行政法人
  • 特殊法人,認可法人
  • 日本の国,地方公共団体の公益法人
  • 法人税法別表第1に掲げる公共法人
  • イノベーション創出企業
  • 一定の条件を満たす企業等

●カテゴリー2

  • カテゴリー1以外で、源泉徴収票合計表の徴収税額が1000万円以上ある団体/個人
  • 「在留申請オンラインシステム」の利用申出の承認を受けている機関

●カテゴリー3

前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体/個人

●カテゴリー4

カテゴリー1~3のいずれにも該当しない団体/個人

【共通書類】

●在留資格認定証明書交付申請書1通

●写真 1葉(指定の規格を満たした写真を用意し、申請書に添付して提出)

●簡易書留用返信用封筒(簡易書留に必要な額の郵便切手を貼付したもの) 1通

●上記カテゴリーのいずれかに該当することを証明する文書適宜(提出可能な書類がない場合はカテゴリー4に該当)

カテゴリー1

  • 四季報の写し又は日本の証券取引所に上場していることを証明する文書(写し)
  • 主務官庁から設立の許可を受けたことを証明する文書(写し)
  • イノベーション創出企業であることを証明する文書(例えば、補助金交付決定通知書の写し)
  • 一定の条件を満たす企業等」であることを証明する文書(例えば、認定証等の写し)

カテゴリー2

  • 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(写し)
  • 在留申請オンラインシステムに係る利用申出の承認を受けていることを証明する文書(利用申出に係る承認のお知らせメール等)[カテゴリー3に該当することを立証する資料を提出した上で、在留申請オンラインシステムの利用申出が承認された機関に限る]

カテゴリー3

  • 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(写し)
  • 従事する業務の内容を証明する所属機関の文書 1通
  • 申請に係る技能を要する業務に従事した機関及び内容並びに期間を明示した履歴書 1通
  • 派遣契約に基づいて就労する場合(申請人が被派遣者の場合)
  • 申請人の派遣先での活動内容を明らかにする資料(労働条件通知書(雇用契約書)等) 1通

【カテゴリー4】

前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする次のいずれかの資料

  • 源泉徴収の免除を受ける機関の場合:外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料 1通
  • 源泉徴収の免除を受ける機関以外の機関の場合:給与支払事務所等の開設届出書の写し 1通
  • いずれかの資料

 →直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるものの写し) 1通
 →納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料 1通

【調理師として活動する方の必要書類】

●申請人の職歴を証明する文書

●料理人(タイを除く)の場合:所属していた機関からの在職証明書等

申請に係る技能を要する業務に従事した期間を証明する文書 1通 →外国の教育機関において当該業務に係る科目を専攻した期間を含む。

●公的機関が発行する証明書がある場合:当該証明書の写し(中華料理人の場合は戸口簿及び職業資格証明書) 1通

タイ料理人の場合:タイ料理人として5年以上の実務経験を証明する文書 →タイ労働省が発行するタイ料理人としての技能水準に関する証明書を取得するための要件を満たすために教育機関において教育を受けた 期間を含む。) 、初級以上のタイ料理人としての技能水準に関する証明書、および申請を行った日の直前の1年の期間に、タイにおいてタイ料理人として妥当な報酬を受けていたことを証明する文書 各1通

●申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料

  • 労働契約を締結する場合:労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書 1通
  • 日本法人である会社の役員に就任する場合:役員報酬を定める定款の写し又は役員報酬を決議した株主総会の議事録(報酬委員会が設置されている会社にあっては同委員会の議事録)の写し 1通

●事業内容を明らかにする次のいずれかの資料

  • 勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が詳細に記載された案内書、その他の勤務先等の作成した前述に関連する文書 1通
  • 登記事項証明書 1通
  • 直近の年度の決算文書の写し。新規事業の場合は事業計画書 1通

【調理師以外の活動する方の必要書類】

●申請人の職歴を証明する文書

外国特有の建築技術者、外国特有の製品製造者、動物の調教師、海底掘削・探査技術者、宝石・貴金属・毛皮加工技能者の場合

所属していた機関からの在職証明書(所属機関の名称、所在地及び電話番号が記載されているものに限る。)等で、申請に係る技能を要する業務に従事した期間を証明する文書(外国の教育機関において当該業務に係る科目を専攻した期間を含む。) 1通

パイロットの場合

250時間以上の飛行経歴を証明する所属機関の文書 1通

スポーツ指導者の場合

  • スポーツの指導に係る実務に従事していたことを証明する文書(外国の教育機関において当該スポーツの指導に係る科目を専攻した期間及び報酬を受けて当該スポーツに従事していた期間を含む。) 1通
  • 選手としてオリンピック大会、世界選手権大会その他国際的な競技会に出場したことを証明する文書 1通

ソムリエの場合

  • 在職証明書(所属していた機関の名称、所在地及び電話番号が記載されているものに限る。)でぶどう酒の品質の鑑定、評価及び保持並びにぶどう酒の提供(以下「ワイン鑑定等」という。)についての実務経験を証明する文書(外国の教育機関においてワイン鑑定等に係る科目を専攻した期間を含む。) 1通
  • 次の(ア)若しくは(イ)の資料又は(ア)若しくは(イ)の資料を所持しない者は(ウ)の資料

(ア) ワイン鑑定等に係る技能に関する国際的な規模で開催される協議会(以下「国際ソムリエ  コンクール」という。)において優秀な成績を収めたことを証明する文書 1通


(イ) 国際ソムリエコンクールにおいて国の代表となったことを証明する文書(出場者が1国につき1名に制限されているものに限る。) 1通


(ウ) ワイン鑑定等に係る技能に関して国(外国を含む。)若しくは地方公共団体(外国の地方公共団体を含む。)又はこれらに準ずる公私の機関が認定する資格で法務大臣が告示をもって定めるものを有することを証明する文書 1通

●申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料

  • 労働契約を締結する場合:労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書 1通
  • 日本法人である会社の役員に就任する場合:役員報酬を定める定款の写し又は役員報酬を決議した株主総会の議事録(報酬委員会が設置されている会社にあっては同委員会の議事録)の写し 1通

●事業内容を明らかにする次のいずれかの資料

  • 勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が詳細に記載された案内書、その他の勤務先等の作成した前述に関連する文書 1通
  • 登記事項証明書 1通
  • 直近の年度の決算文書の写し。新規事業の場合は事業計画書 1通

④審査期間

 在留資格「技能」ビザの審査期間は、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請ともに 約1〜3か月が目安です。書類の不備や追加資料の要求があると、さらに時間がかかることがあります。また、審査の際には、申請することの合理性(なぜこの職種で働くのか、過去の経歴との整合性)が厳しくチェックされます。さらに勤務先の経営状況なども審査の重要なポイントとなります。

 審査期間を短縮するためには、申請書類を正確に整え、入管からの問い合わせにも迅速に対応することが重要です。

不許可事例

⑤不許可事例

実務経験不足(要件未達)】

例:インド料理のシェフとして申請したが、実務経験が9年しかなかった

「技能」ビザでは、特定の職種ごとに一定年数以上の実務経験が求められます。例えば、外国料理の調理人であれば 10年以上の実務経験 が必要ですが、9年の経験しかない場合は要件未達として不許可となります。

対策:実務経験証明書を正確に用意し、要件を満たしていることを証明する。

職務内容が「技能」に該当しない

例:フランス料理のシェフとして申請したが、実際の業務内容が調理補助だった

「技能」ビザは高度な専門技術を要する業務に限定されています。例えば、フランス料理のシェフとして申請したにもかかわらず、実際には厨房での下ごしらえや配膳が主な業務である場合、不許可となる可能性が高いです。

対策:職務内容が「技能」ビザの対象となるものであることを明確にし、雇用契約書や業務計画書で詳細に説明する。

雇用先の事業実態が不十分

例:日本料理店が外国人シェフを雇おうとしたが、開業から間もなく経営実態が不透明だった

雇用主となる企業や店舗の経営が安定していない、または事業実態が不明瞭な場合、ビザの審査で不許可となることがあります。特に新規開業の飲食店や、売上が不安定な企業では「本当に外国人を雇用できる経営状態なのか?」と疑問を持たれやすいです。

対策:会社の財務状況や売上実績を示す資料を用意する。事業計画書を作成し、外国人の雇用が必要な理由を明確に説明する。

申請書類の不備や虚偽の内容】

例:実務経験を証明する書類を提出したが、勤務先の情報が不正確だった

実務経験を証明する書類(雇用証明書など)の記載内容に誤りがあったり、提出書類が不十分だったりすると、不許可になることがあります。また、虚偽の情報を記載すると、審査で発覚した際に大きな問題となります。

対策:書類の記載内容を正確にし、不明点があれば事前に確認する。証明書類の発行元(雇用先など)としっかり連携を取る。

過去の在留歴や不法滞在歴が問題視された

例:過去に技能実習生として来日し、在留期限を超えて滞在した経歴があった

過去に日本での不法滞在やオーバーステイ、資格外活動の違反がある場合、「技能」ビザの申請時に審査が厳しくなり、不許可となる可能性があります。

対策:過去の在留歴を正直に申告し、違反歴がある場合は反省文などを添付する。今後適正に在留する意志を示すため、企業のサポート体制などを説明する。

給与水準が適正でない

例:外国人シェフを雇うが、日本人と比べて極端に低い給与で契約した

「技能」ビザの取得には、日本人と同等以上の給与が支払われることが条件となります。例えば、日本人のシェフが月給25万円のところ、外国人シェフに15万円しか支払わない場合、不適切な労働条件と判断され、不許可となる可能性があります。

対策:日本人と同等水準の給与を設定し、労働契約書に明記する。雇用契約書や給与明細を提出し、適正な待遇であることを示す。

まとめ

「技能」ビザの申請で不許可になる理由はさまざまですが、共通しているのは 「要件を満たしているか」 「事実を正しく証明できるか」 という点です。実務経験が不足していたり、業務内容がビザの範囲外だったりすると、審査を通過するのは難しくなります。また、雇用先の経営状態や申請書類の正確性も重要なポイントです。

当事務所では、不許可リスクを回避するための書類作成サポートや事前のチェックを行っています。「技能」ビザの申請をお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の筆者:浅野 長慈 (在留資格申請取次行政書士)

地方公共団体勤務の後、海外人材紹介会社、国内監理団体にて外国人材ビジネスを経験。2024年、アンコール事務所を開設。