在留資格の概要 -Overview-
① 資格の趣旨
「日本人の配偶者等」の在留資格は、外国人配偶者が日本人配偶者や子供などと日本で生活し、長期間滞在するための在留資格です。この資格は、日本人の家族である外国人が日本で生活をすることを支援し、家族の一体性を守ることを目的としており、主に外国人配偶者、日本人の子供、または特別養子※が対象となります。
通称「配偶者ビザ」「結婚ビザ」と呼ばれることから、この記事では「配偶者ビザ」という用語で説明します。
外国人配偶者や家族は、この在留資格を持つことで、愛する家族と共に日本で暮らせるだけでなく、日本において自由に生活し、また仕事をすることができます。他のビザと違い、活動内容に制限がなく、就労や学業、日常生活において柔軟に対応できるという大きなメリットがあります。日本国内での滞在を通じて、家族との絆を深め、日本社会への適応を進めるためのサポートを受けることができる制度です。他の在留資格で、すでに日本に在住している方も、今後日本人と結婚する、あるいはすでに結婚しているのであれば、早めにこの在留資格への変更を検討すると良いでしょう。通称永住権と呼ばれる永住者ビザの許可申請を将来的に検討されている方は、許可条件である日本の必要在住期間が短縮されるというメリットもあります。
一方で、この在留資格を得るためには、クリアしなければならないいくつかの条件があり、誰でも許可されるものではありません。この結婚が真実であるのか(偽装の疑いはないか)、日本で暮らすための安定した経済基盤を備えているのか、婚姻生活を安定して継続させることができる人物であるのかなど、様々な側面から厳しく審査を受けることとなります。また、要件をクリアしていることを証明するための提出書類は限りなく正確である必要があり、また量も膨大です。入念な事前準備を経て申請に臨む必要があります。自分たちで申請することももちろん可能ですが、申請書類を適切に作成することは、かなり難易度も高く多くの時間を費やします。費用がかかるというデメリットはありますが、専門家である行政書士に依頼するのもひとつの方法です。料金の相場は、認定証明書交付申請・変更許可申請で6万円〜18万円、更新許可申請で4万円から9万円となっています。
※特別養子:特別養子縁組制度とは、さまざまな事情により生みの親のもとでは暮らせないこどもを、自分のこどもとして迎え入れる制度です。原則として15歳未満の子どもが特別養子になれます。
② 資格条件
配偶者ビザを取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。
【日本人との婚姻関係】
外国人配偶者とが日本人配偶者が正式に婚姻していることが必須条件です。この婚姻は日本、及び外国の法律に基づいて合法的に成立している必要があります。婚姻関係が形式的なものでなく、家族としての実態があることが求められます。
【経済的な基盤】
外国人配偶者とが日本人配偶者が、安定した生活を送るための経済基盤を持っていることが重要です。これは、収入が安定しており、日本で生活するための経済的な余裕があるかどうかが審査されます。特に、主たる収入源である日本人配偶者が、申請者を扶養できるだけの収入を得ていることが求められます。
【住居の確保】
外国人配偶者とが日本人配偶者が日本で共に住むための適切な住居が確保されていることも条件のひとつです。住居が確保されていない場合や、住居環境が不適切である場合は、申請が認められない可能性があります。
【結婚生活の実態】
外国人配偶者とが日本人配偶者が実際に共に生活し、婚姻生活を続けていること、あるいは続けていけることが確認されなければなりません。日本国内、または外国で別々に住んでいる場合や、短期間の結婚生活では、在留資格の取得が難しくなる場合があります。
【その他の家族関係】
日本人の子供(未成年)を扶養している外国人親も、配偶者ビザを申請することができます。この場合、親子関係を証明するための書類や、扶養状況が確認されます。
③ 必要書類(在留資格認定証明書交付申請/在留資格変更許可申請)
【外国人配偶者に関する申請書類】
・在留資格認定証明書交付申請書(他の在留資格をすでに持って日本に滞在している場合は在留資格変更許可申請書)
・証明写真1葉(4cm×3cm)
・外国人配偶者の母国から発行された結婚証明書(日本語翻訳を添付)
・パスポートのコピー(変更許可の場合は原本提出)
・在留カード(変更許可の場合必要)
・世帯全員の記載のある住民票(変更許可の場合必要)
・住民税納税証明書(直近2年分)(変更許可の場合必要)
・住民税課税証明書(変更許可の場合必要)
・源泉徴収票(就労している場合の変更許可に必要)
・卒業/在学証明書(変更許可の場合必要)
※揃えた方がよい書類
・日本語試験合格証のコピー
・履歴書
・外国人配偶者の母国から発行された無犯罪証明書(日本で前科がある場合)
・その他必要に応じた書類
【日本人配偶者に関する申請書類】
・戸籍謄本
・世帯全員の記載のある住民票
・住民税納税証明書(直近2年分)
・住民税課税証明書
・身元保証書
※揃えた方が良い書類
・在職証明書
・履歴書
・預金残高証明書等
・源泉徴収票(直近年度分)
・所得税の納税証明書(その1・その2)
・経営者である場合、事業概要説明書、会社の決算書類、法人税納税書類
・パスポートのコピー
・その他必要に応じた書類
【共通申請書類】
・質問書(質問書に書く内容や書き方は大変重要。プライベートなことなど、かなり踏み込んだ内容をていねいに書く必要があります。当事務所に手続きをご依頼される場合、定型例文はありませんが、ご夫妻の事情に応じた適切な記載内容をご案内することが可能です。)
・交際の事実を証明する写真(ご夫妻が2人で写っていて容姿がはっきり確認でき、かつ交際していることが客観的に確認できるもの。結婚式、結婚パーティー、親族を交えた食事会などの様子を撮影したスナップ写真など。)
・メール、スカイプ等、メッセージの交換履歴
・生計状況説明書
・同居予定住宅の登記事項証明書または賃貸借契約書
・同居予定住宅の写真と地図
※揃えた方が良い書類
・申請理由書
・交際経緯説明書
・親族/知人の上申書
・前婚についての経緯の説明書(国際結婚の離婚歴がある場合)
・その他必要に応じた書類
④ 必要書類(在留資格更新許可申請)
【外国人配偶者に関する申請書類】
・在留資格更新許可申請書
・証明写真1葉(4cm×3cm)
・パスポートのコピー(原本提出)
・在留カード
・住民税納税証明書(直近2年分)(外国人配偶者が日本人配偶者を扶養している場合/就労している場合)
・住民税課税証明書(外国人配偶者が日本人配偶者を扶養している場合/就労している場合)
・源泉徴収票(外国人配偶者が日本人配偶者を扶養している場合/就労している場合)
・その他必要に応じた書類
【日本人配偶者に関する申請書類】
・戸籍謄本
・世帯全員の記載のある住民票
・住民税納税証明書(直近2年分)
・住民税課税証明書
・身元保証書
・源泉徴収票(直近年度分)
・その他必要に応じた書類
⑤ 審査期間
【標準的な審査期間】
配偶者ビザの審査期間は、通常1か月から3か月程度です。しかし、申請時期や書類の不備、追加確認が必要な場合には、さらに長い時間がかかることがあります。審査が終了し、申請が認められると「在留資格認定証明書」が交付されます。申請者が海外にいる場合は、この証明書をもとに日本の大使館や領事館でビザを申請し、ビザが発給され次第、日本に入国後、在留カードを受け取ることができます。既に日本国内にいる場合は、在留資格の変更手続きを行い、在留カードを取得します。
【交付される在留カードの期間】
概ね1年、3年、5年の在留期間が許可されます。
⑥ 不許可事例
配偶者ビザ申請は、書類を揃えて提出するだけでは許可が下りない場合があります。偽装結婚の疑いや書類不備、生活基盤の不安定さなど、さまざまな理由で不許可となるケースが存在します。よくある不許可事例は以下のとおりです。
【結婚の真実性に疑問がある場合】
・結婚生活の真実性が乏しく偽装結婚が疑われる場合
・配偶者間の出会いが、出会い系サイト、SNS、キャバクラ等であり「安定した夫婦関係を築ける根拠として弱い」「結婚の真実性に乏しい」あるいは「結婚が短期間で破綻する可能性が高い」と判断された場合
・交際期間が短すぎる場合
・配偶者間の年齢が著しく離れている場合
・質問書や説明書で、結婚までの経緯や結婚生活に関する矛盾した回答がある場合
・交際を証明する写真が極めて少ない場合
・親族への挨拶をしていない、あるいは結婚式や祝賀会などをしていないなど、結婚が公になっていない場合
・同居していない、または同居する予定がないと判断される場合
・実質的な夫婦関係が認められない場合(交流が少ない、連絡が途絶えているなど)
【申請人の素行や経歴に問題がある場合】
・過去に日本での在留資格に関する違反がある場合(不法滞在、不法就労など)
・犯罪歴がある場合
【扶養能力や生活基盤に問題がある場合】
・日本人配偶者が申請者を十分に扶養できる収入がない場合
・経済的に不安定で生活基盤が不十分と判断される場合
【婚姻手続きや書類に不備がある場合】
・婚姻が適法に成立していない場合(例えば、日本または母国の法律に違反する場合)
【必要書類に不備がある場合】
・提出された書類に記載内容の矛盾や誤りが多い、または虚偽があると認められる場合
【過去の申請歴に問題がある場合】
・過去に虚偽のビザ申請をしたことがある場合
・過去に配偶者ビザ申請で不許可となった履歴がある場合
・過去に退去強制処分を受けたことがある場合
【その他の理由】
・入国管理局の調査結果として適当でないと判断される場合
・日本の社会秩序や公共の安全に影響を及ぼす可能性がある場合
不許可の具体的な理由は個々のケースにより異なります。不許可になったらどうしよう‥‥、と考える方もいると思いますが、状況を改善し再申請により許可を得ることが可能な場合があります。専門家である行政書士に相談することで、対策を講じることができます。
まとめ
配偶者ビザは、日本国内で安定した生活を送るための経済基盤や、婚姻関係の実態を証明することが重要です。十分に準備をして申請する必要がありますが、自分でやる場合、多くの書類を適切に揃え申請することはとても大変です。また多くの書類は、時系列や理由など、すべての面で整合がとれていることを自分たちで確認しなければなりません。不許可の確率を可能な限り低減させるためにも入国管理局の審査に適した書類作成や手続きに精通した行政書士に依頼することをお勧めします。
記事作成:浅野 長慈 (在留資格申請取次行政書士)
Osami Asano -Administrative Scrivener for Residence Status Application-
地方公共団体、海外の人材紹介会社、外国人技能実習生監理団体/特定技能登録支援機関勤務を経て、2024年アンコール行政書士事務所を開設しました。趣味は楽器演奏、ジョギング、山登り、旅行、英語の勉強(TOEIC805点)です。迅速・誠実をモットーに皆さまからのオーダーにお応えしていきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
After working at local governments, overseas recruitment agencies, and organizations that manage foreign technical interns / registered support organizations for specified skilled workers, I established this office in 2024. My hobbies include playing musical instruments, jogging, hiking, traveling, and studying English (TOEIC score: 805). With a motto of speed and sincerity, I aim to respond to your requests. I look forward to working with you.